【看護師が解説】「医療の常識」を統計学が覆した例【CAST試験】

医学に統計学が使われていることは聞いたことがあると思います。

しかし、「なぜ統計学が使われるようになったのか」、「エビデンスが大事と言われる理由」はなかなか具体的に答えることは難しいのではないでしょうか。

実際、看護を学んでいる方や臨床家でさえも具体例を挙げてわかりやすく説明することは難しいのではないかと思います。この記事ではなぜ医学に統計学が必要なのか、人に説明できるように有名な事例をひとつ紹介したいと思います。

※この記事ではあくまで統計学を扱います。医療情報については信頼できる情報源をご参照ください。

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「医療の常識」が覆った例

結論を先に書きます。

CAST試験という試験によって、今まで使っていた不整脈が患者の寿命を減らすことがわかりました。

ソースはこちらです。

実際の論文:https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/nejm199103213241201
医師による解説記事:https://www.jhf.or.jp/pro/hint/c3/hint015.html

CAST試験とはどのような研究だったのか

この研究は、1498名の患者さんに対して、「不整脈の薬物治療を減らすとどうなるか?」について調べた試験になります。詳しい薬を投与している群と投与していない群を比較したところ、

心筋梗塞の既往がある患者さんに不整脈の薬を使ったら患者さんの寿命が縮む

ということがわかりました。この結論が出てから、試験は即時中止されました。

実はその当時まで、不整脈がある患者さんに不整脈の薬を使えば、寿命が伸びると経験的に信じられており、それが覆ったのです。

※現在の治療は安全なものに切り替わっています。

この例からわかること

この事例から、

一見正しいように思えることでも、統計学を用いて確認しないと医学的な間違いが起こる

ということがわかります。

私がまだ学部生だったときに循環器内科の教授から聞いた話を持ち出したいと思います。

  • 強心薬は心不全の患者さんによく使ってたんだけど、良くないことだって分かった。
  • 逆に、β遮断薬は私達が研修医だった頃は心臓に病気がある患者さんには禁忌だった。
  • 私が若い頃は心不全の患者さんに心筋を休める薬を使うなんてとんでもないことだと言われていたんだけど、実は心筋を休めたほうが患者さんが長生きすることがわかって常識が覆った。

この先生の話から、evidence-based medicine(根拠に基づく医療)って大事なんだな、と納得した思い出があります。

また、知識は常にアップデートすべきものだ、ということも再確認できました。

まとめ

医学に統計学が必要なひとつの理由は、

理屈のうえでは正しく思える治療方法が、実際は正しいとはいえない、それを確かめる必要があるから。

なのです。

さらに勉強したい方へ

統計学や統計リテラシーについて学ぶと良いと思います。「統計学が最強の学問である」という本は、数式をできるだけ使わずに説明しているので、文系の方にもおすすめです。

レビュー記事を置いておきます。

記事の内容は以上です。

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