【看護師が解説】世界一わかりやすいランダム比較試験

みなさん、質的研究読めてますか~?統計学の勉強はすすんでますか~?

まあ、楽しんでやれているって人はごく少数だと思います。

自分も辛かったので、この記事ではランダム比較試験について世界一わかりやすく解説していきます。「大まかな試験のやり方」や「なぜ因果関係を示せるのか」ということを、医学の初学者でも分かるように書いています。実際の研究も引用しながら解説しますので、頑張って理解していきましょう。

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世界一わかりやすいランダム比較試験

この前の記事で、「相関関係は因果関係を意味しない」という説明をしました。

それでは、「原因と結果の関係になっていること」を説明するにはどのような研究が必要なのでしょうか。

非現実的ですが、「チーズの消費が増えると工学の学位を取る人が増える」という仮説を立証したい、としましょう(笑)、さっきの記事で扱った例ですね。もし、研究をするとしたら、

①まず、人をたくさん集めます。
②その人達をランダムに2グループに分けます。
③片方のグループにチーズをたくさん食べてもらいます。
④何年かたったあと工学の学位をとった人がどれくらいいるか調べて、統計ソフトにかけます。

おおまかにこんな感じです。(厳密にはさらに作業が入ります。)

実際の論文を解説

この論文を使います。研究の一部を本当に簡単に紹介します。

Henry DH, et al. Randomized, Double-Blind Study of Denosumab Versus Zoledronic Acid in the Treatment of Bone Metastases in Patients With Advanced Cancer (Excluding Breast and Prostate Cancer) or Multiple Myeloma. J Clin Oncol. 2011;29; 1125-32.

研究の結論

この研究は、ゾレドロン酸とデノスマブという2種類の薬の比較をした研究です。結論としては、デノスマブのほうがゾレドロン酸よりも骨の病気になりにくくなる傾向が見られたが、統計的にしっかりと差があるとまでは言えなかった。というものでした。(結果のほんの一部のみお話しています。)

研究の大枠と前提知識

まず、骨関連事象(SRE)についてお話しなくてはいけません。がんに関する病態です。

がんは骨にまで広がることがあるのですが、これを骨転移といいます。この骨転移によって起こる痛みや麻痺、骨折などをひっくるめて骨関連事象(SRE)といいます。

この研究の段階(2011年)ではこの骨関連事象(SRE)に対してゾレドロン酸が使われているようです。しかし、ゾレドロン酸には腎障害に注意しなくてはならず、腎臓が悪い患者さんには使えないという弱点があります。そこで骨関連事象(SRE)を抑える他の薬としてデノスマブを比較してみよう、というのが研究の出発点です。

次に、この図のようにゾレドロン酸を投与する群とデノスマブを投与する群をランダムに振り分け、投与後に時間を置いて、両群の患者さんの様子を比較しています。

研究結果やデータの解釈のプロセスはぶっ飛ばしちゃいますが、検証した結果、安全性や有効性ともに問題なくデノスマブは使えるという結論に至っています。
(申し訳ないのですが、データの結果やディスカッションを1から10まで解説することは、私の能力的に不可能です…)

この研究は薬の効果を比較していますが、手術のやり方でも、マッサージのやり方でも、なんでも比較できます。

なぜランダム比較試験が強力なのか

先程の薬の研究から考えていきましょう。ランダム比較試験ではない方法を使うとしたら、どのような方法があるでしょうか

仮説のみで理論を組み立てる

これは薬Aも薬Bも同じくらい効く仕組みがあるからどっちもいいんじゃね?という仮説で理論を組み立てるという手法です。昔はこれで良かったのですが、今では認められません。これだと間違いが起こることがわかっています。この記事で解説しています。

薬Aを過去に使った人と薬Bを過去に使った人を比較する

これは実際の研究に使われる手法で、ケースコントロール研究と言います。

こんな感じの表を作って統計にかけます。↓

しかし、この研究方法には弱点があります。それは

2つのグループで均一な条件にならない可能性がある

ということです。

つまり、

薬Aを服用したグループに偶然女性が多い、とか偶然50代の方が多いというケースが考えられるのです。

薬の効果を判定したいのに、偶然の要因のせいで効果を測定することが困難になることがあるということです。

そのためケースコントロール研究をやる場合は2つのグループの性別や年齢などの偏りがないか、チェックします。

なぜランダム比較試験が強力なのか

ランダム比較試験はケースコントロール研究の弱点を克服しています。

ランダム比較試験では、集団をランダムに分けるので、集団同士が均質になります。

まあ、均質にするのも結構難しかったりするんですが。

まとめ

ランダム比較試験で重要な点は3つです。

  • 集団をランダムに分けて薬の効果を判定する。
  • ランダム化しているので薬以外の条件はすべて揃っているので信頼性が高い。
  • 薬の効果だけでなく、手術の方式、マッサージのやり方、なんでも比較できる。

ちなみに、ランダム化が科学を発展させた、ということは「統計学が最強の学問である」という本で解説してあります。この記事を書く際にも参考にしました。

統計学の導入として素晴らしい本なのでぜひ読んでみてください。レビュー記事はこちら

余談ですが、ランダム比較試験は万能ではなく、弱点もあります。こちらの記事で解説しています。→作成中

また、この記事は統計的有意差をいう言葉を避けて書いています。それについての解説はこちら→作成中

引用サイト

①がん薬物療法時の腎障害ガイドライン2016
https://www.jsmo.or.jp/about/doc/guideline_160630.pdf

②SREについて
https://kompas.hosp.keio.ac.jp/sp/contents/medical_info/presentation/201809.html

③ゾレドロン酸について
https://www.rad-ar.or.jp/siori/kekka.cgi?n=39397#:~:text=%E8%A1%80%E6%B6%B2%E4%B8%AD%E3%81%AE%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%82%A6%E3%83%A0%E3%81%AE,%E6%B2%BB%E7%99%82%E3%81%AB%E7%94%A8%E3%81%84%E3%82%89%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

④デノスマブについて
https://www.ryumachi-jp.com/publish/guide/guideline_denosumab/#:~:text=%E3%83%87%E3%83%8E%E3%82%B9%E3%83%9E%E3%83%96%E3%81%AFRANKL%20%E3%82%92%E6%A8%99%E7%9A%84,%E5%8A%B9%E6%9E%9C%E3%81%8C%E8%BF%BD%E5%8A%A0%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%9F%E3%80%82

この記事の内容は以上です。

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